北海道 三原順とアイヌの旅(その5)二風谷コタン
8月2日(月)に朝から札幌から二風谷(にぶたに)に向かうため、札幌駅に行くと、早朝に人身事故があって、JRがだだ遅れのようだった。ちょうど週明けの通勤時間と重なって、改札前に仕事に行く人たちがたくさん思案していた。ちょうどいい時間に高速バスの苫小牧行きがあったので、それに切り替えることにした。二風谷はあまり食べるところがないようなので、駅弁とパンも調達した。高速バスで札幌−苫小牧は約1時間半、JRがあのような状態でもバスは空いている。
苫小牧駅から二風谷に行くバスルートは1日1本。道南バスの苫小牧駅発11時25分で終点平取(びらとり)13時11分着、そこで13時30分発のバスに乗り換えて13時39分資料館前着のルートしかない。苫小牧駅から1日1本の路線バスは、途中で地元の人が数人乗り降りするけど、始発から終点まで乗ったのは私だけだった。平取から二風谷までバスを乗り継いで約2時間。今日はよく晴れている。北海道は山がなくて平たくて、馬牧場、ひまわり畑、太陽光パネル畑などがある。道南バスの車内放送は日本語とアイヌ語だった。
二風谷の宿泊先の「ゲストハウス二風谷ヤント」は、バス停から歩いて5分くらいだ。チェックインは15時からだが、荷物だけあずけることができるか電話をしたら、オーナーの萱野(かやの)さんが軽トラでやってきて、そのままチェックインもした。今日の宿泊は私ひとりらしい。やった!一棟貸! 2泊目はもう1人いたが、それぞれドミトリーの部屋を貸切で、夜21時過ぎに来て、翌日朝8時前に車で風のように去って行った。朝に少し話をしたが、目的は二風谷ではなく、競馬と帯広と札幌のマラソンの応援だったらしい。このゲストハウスも比較的新しく、自炊や洗濯機・シャワーの設備もそろっていて、基本自己管理で放っておいてくれるので気が楽だ。しかし、冷房設備がないので、この夏は暑すぎ! 網戸にして、扇風機で過ごすが、夜も室内は暑い。8月2日から北海道もマンボウの発出で、ゲストハウスもキャンセルが出ているらしい。だから、ホントは喜んだらあかんのだけど。すみません。「来てくれた方が嬉しい」と言ってくれたので、贅沢させてもらった。
8月2日は月曜日でほとんどの店、施設が閉まっているようだが、すぐとなりの「萱野茂二風谷アイヌ資料館(以下、資料館)」は開館しているので、ここと「平取町立二風谷アイヌ文化博物館(以下、博物館)」との共通割引券を購入する。
この2館は姉妹館のようなもので、先にこの資料館が1972(昭和47)年に開館して、そのあと1991(平成3)年博物館がオープンして所蔵資料を移転、1992年(平成4)年3月に旧資料館の建物を再利用し、萱野氏の新たなコレクションを展示して今に至る。名称や所轄についてはもっと経過があるが、それはホームページに詳しい。施設も年季の入ったものだが、タイトルとかがすべて手作りで、ひとつひとつがポスカラでレタリングして色をそろえている! 当時の丁寧な仕事にカンドーした。(視点が違うって?) そして、なんとなくお顔が似ているから聞いてみたら、受付にいたのは館長さんだった。(茂氏の息子さん)
初日は、欲張らずにその後は二風谷コタンのだいたいの位置確認をした。資料館と博物館の間は「匠の道」と称して、いくつかの匠のお店と、整備された公園があり、そこにチセがいくつか点在している。中を覗いてみると、人がいたのでビックリした。チセには、織り、木彫り、刺繍などの職人さんが当番制でだいたい10時〜16時ぐらい常駐しているのだそうだ。お休みしているチセもあるが、この3日間でだいたい覗いたが、いつも貸切状態でちょっとお話をした。その後、沙流川にそった遊歩道を少し歩いて、ダムは遠いので諦めて、その途中の旧マンロー邸という英国人の人類学者が住んでいた洋館をみて帰った。
この日の昼ごはんは札幌で買った駅弁、晩ごはんは苫小牧で買った駅弁ですました。。
貸切がキャンセルされ、二風谷2泊に変更したので、8月3日(火)はなか日で余裕ができた。ちょっと離れた「びらとり温泉ゆから」に日帰り温泉とランチに行ってこようと計画した。事前に「沙流(さる)川歴史館」に貸自転車があるときいていたので、まずそこに行ったのだが…… 館内改装で臨時休館! 聞いてないよ〜 まあ、歩けない距離ではないので、行きは温泉まで15分歩いて、帰りは路線バスに乗った。温泉はレストランの売れ筋のローストビーフ丼とセットになった割引入浴券があったので、それで入場。地元の人も入浴にくるようで、年配の人と家族連れが何人かいたが、総じて空いていて、とてもゆっくりできた。夜ごはんはそこのテイクアウトの豚天ぷら丼にして、温泉の売店で名産の平取トマトを1つ買って帰る。地図にある公園のなかのカフェも国道に面したランチハウスも閉まっている。二風谷の人気の無さに、ここならコロナが寄り付かないんじゃないかとも思うが、人が来ないと商売が成り立たない。さあ、明日はどうする?
その後、宿に荷物をおいて、博物館に行って公園のチセをいくつか訪ねた。博物館は1991(平成3)年オープンと資料館のHPに書いていたが、内装がもっと新しく見えるので、そのあとリニューアルしたのではないかと思う。数人見学者がいたが、ここもまったくソーシャルディスタンス。スーベニールなどはないが、「平取町文化的景観解説シート」というのが74項目のばら売りもしているがファイルに綴じて1冊になったものがあったので購入した。
最終日の8月4日(水) 昨日、博物館近くの「平取アイヌ文化情報センター」に立ち寄ったとき、コースターの木彫り体験(ここは無料!)をすすめられ、「今日は温泉に行くので明日きます」といっていたので、朝から伺う。10時の回はまたしてもマンツーマン! 洲崎さんという匠が教えてくださる。りっぱな彫刻刀を使わせてもらい、1時間で、三角刀と切り出しを使って、曲線の模様を描き、鱗彫りまでさせてもらった。ウポポイの木彫体験より難しいけど中身が濃い! ここでは、匠の紹介と作品の販売も行っていて、ちょうど即売会で使えそうな須崎さんの小ぶりのイタ(皿)を購入した。やっぱり、公園のカフェは開いていなくて、公園の木陰のベンチで札幌で買い置きしておいたパンを食べる。当初は、1泊のつもりだったから、帰りのバスはできるだけ遅めに、資料館前16時06分で富川市街16時37分で、苫小牧駅のバスに乗り換えて帰る積もりだった。が、暑いし、店は閉まってるし、そこまで時間をつぶすのにネタがつきた。そこで、乗り換え案内で検索し直して、1本前の13時10分のバスで富川市街乗り換え、鵡川(むかわ)駅まで行って、JRに乗り換えることにした。
バス待ちの間は、ヤントにあずけていた荷物を取りに行って、坂の途中の「平取町アイヌ工芸伝承館ウレシパ」(※シは小文字)で道内の博物館の紹介ビデオを観ながら涼んで、レーザープリンタのペンダント作成体験もする。ウレシパは若手職人の育成施設でもあり、いろいろな作業場もある。その時は職員さんが野外のお釜でアトゥシを煮ていた。
鵡川駅までのバスは、地元の人が2、3人乗っただけで、やっぱりとても空いていた。
JRの日高本線は2015(平成27)年の土砂災害で鵡川〜様似(さまに)間約116kmが不通になった。さらに2018(平成30)年の北海道胆振(たんしん)東部地震で沙流川橋梁(富川〜日高門別間)の線路がずれて、復旧に約2年・5億円が必要となったことも重なり、2021(令和2年)3月末で鵡川〜様似区間が廃止になった。なので、日高本線といっても、苫小牧〜鵡川間の5駅しかなく、営業距離10.5kmの1両編成ワンマンカーだ。鵡川駅より先の線路には雑草が生えていた。電車が到着すると、乗客はみんな降りて、運転手さんが反対側の進行方向に移動する。学生等、地元の人が数人乗っていた。苫小牧に着くまでの何もない草っ原を通過したとき、電車が大きな警笛を何度か鳴らした。踏切?と思ったが、何もない。ふと横を見ると、湿原にシカは何頭か走っていた。シカよけの警笛だったのか!
北海道の二風谷近辺に行ってみて、コロナ禍の様子って都会と田舎で状況が違いすぎると実感した。全国一律に宣言を出さなくても、田舎はもう既に人がこないので自主的に休館・休店(閉店?)になっている。いくら北海道は自動車移動がメインとはいえ、バスや鉄道も生活路線なのにこれは明らかな赤字、大丈夫か?と心配だ。(大丈夫じゃないだろう、鉄道はいろいろ廃線になっているし)
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