写真集『Tannery』とトークイベント「写真集『Tannery』ができるまで」
雨がしとしとふる月曜日、土日働いた分、月曜が休日なので雑用のあと、丸善ジュンクと誠光社を2軒回るつもりで河原町に出かけた。平日のうえ天気が悪くて、あちこちが空いていて楽々だ。誠光社も以前行ったときと違って、初めのうちは貸し切り状態だったので、カバンを床に置いて端から端まで順繰りに棚を見ていく。奥の小さなギャラリーまで行くと、「あれ? なんかインドらしい写真がある」と思って覗くと、「どうぞ、バングラデシュの皮なめし工場の写真展です」と声をかけてくれたのが、作者の写真家の吉田亮人(あきひと)さんだった。(パソコン打ってたからので、お店の人かと思っていた) はじめはタイトルの読み方(「タナリー」と読む)も、工場のあるハザリバーグという地名もわからなかったが、いろいろお話していただいて、つい、その皮なめし工場で作った皮のカバーがついている特装版を予約した。たまたま写真展は今日から始まっていて、ネット予約はあったけど、書店では初めてということで、有り難くも書店予約第1号の栄誉にあずかった。
その時にいただいたDMに、5月30日(月)にトークイベント「写真集『Tannery』ができるまで」が開催されることが載っていた。誠光社にて、吉田亮人さんと、今回の写真集の装丁をした矢萩多聞さんとのトークイベントだ。多聞さんは以前Tarabooksのお話を一乗寺恵文社で聞いたことがある。これはまた、ラッキーなことに月曜日なので、後日電話で申し込んだ。当日は18時でいったん閉店して、18時30分から受付、イベントは19時開始という。あの狭い店内のどこでやるのかな?と思ったら、真ん中の両面書架にキャスターがついていて端に移動され、イスが並んで20人ばかりの会場ができていた。数日前に予約確保の電話もいただいていたので、開始前に購入。吉田さんと矢萩さんの息の合った掛け合い漫才……もといトークで、吉田さんは小学校の先生をしていて、奥さんに「写真をしたら?」といわれるまで、写真をやったことなかったこと、パリの展覧会に出展したときのドタバタ?や皮なめし工場にどうやってアプローチしたかなど、次々と話がわいてでてきて2時間があっという間だった。終了後「Tannery」にサインもいただいた。
その写真集『Tannery』だが、これは自費出版になる。レザーケース付きの特装版は100部、「コルドバ」という皮のような特殊紙を揉んで伸ばして折って手作りしたカバー付きの普及版400部。ページは180度に開くコデックス装で、表紙がない。多聞さんが「ケースから内蔵が出てくるかんじで」という表現を使っていたのがうなずける。まさに、この写真集の皮は本当にぬめっとした生臭い皮だ。それが、特装版に整えられた赤いケースの皮と本当に同一なのかと疑いたくなる。職人はほとんど装備なく皮をなめす劇薬を使う。蒸し暑く、ものすごい臭いが充満しているらしい。なかなかすさまじい情景だ。思えば、原始に動物の皮は、織物よりも先に人類が身にまとった衣服だ。昨日の記事に書いた『エイラ−地上の旅人』には何度も、狩りをして、動物を解体して、皮をはいで、なめして……という作業が描写されている。その頃は硫酸やクロムといった薬品はなかったはず。たしか、皮を白くするのに、おしっこをためて……という説明があったなあ。クロマニヨン人もやっていた皮なめしが、どうしてこうも薬品漬けになったのか。文化の数奇な歩みを考えさせられる。
吉田亮人さんのホームページはこちら
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