2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

書籍・雑誌

2017年9月28日 (木)

第56回日本SF大会ドンブラコンLL(その4 SF以外の食べ物の話)

 SF話とはそれるが、SF大会は全国各地を巡るので、いろいろ美味しいものをいただく機会がある。
 今回は前日に職場から直行で静岡入り。結局暗くなってから着いたので、荷物をホテルに置いて、近場で夕食を済ませた。お昼を食べそこなったので、駅ナカのお寿司屋さんでちょっと贅沢した。ネタが沼津産、生しらすが売り切れていたけれど、美味しくいただいた。

Img_3455


 ホテルは素泊まりで、2000円の朝食バイキングはちょっともったいないのでパス。ネットで調べて、駅近のおにぎりやさんに行ってみた。昔の家の玄関土間で食堂やってますというような懐かしい店だった。奥の畳の部屋からはその家の子どもの声がする。素朴なおにぎりと味噌汁と静岡おでんを2本チョイスして380円。


Img_3459


Img_3463


 お昼は会場に出展しているお店で「特大干し椎茸のステーキ重」。


Img_3477


 1日目の夜は、参加者の友人とそのお知り合いとで居酒屋に行った。地酒とお刺身と静岡おでんをいただいたが、地酒の何が美味しいか、いろいろ教えてもらったし、酔っ払っていただいたのにうろ覚え。いい加減なことは書けないないので、また修行します。

 2日目の朝は、駅ナカのお店でだし茶漬け。これも割とリーズナブル。
翌日のランチは昨日の隣の店でもつカレーを食べようと思ったけど、売り切れだった。というか、1時30分ごろだったのでほとんど何もなく、結局食べ損ねて適当にお菓子をつまむ。

2017年9月27日 (水)

第56回日本SF大会ドンブラコンLL(その3・企画以外)

 SF大会での毎年の動向として、まずディーラーズルームに出展している。昔はSFマンガも描いていたが、すっかりエッセイマンガしか描けない身体になってしまった。最近はカンブリア生物や深海生物の切り絵しおりに入れ込んでいて、「これのどこがSFやねん?」と、まわりのまっとうなファンジンに囲まれて申し訳ない思いがあるけれど、懐がひろいSFファンのおかげで、楽しい会話をさせていただいている。今年は『ギョギョっと深海魚』というタイトルの薄い新刊を出すことが出来た。
やっぱり静岡だし、沼津深海水族館もあるし、今年創らなくていつ創る?!と思ったが、この原稿を印刷所に出稿したとたん腰痛になった。あぁ。

Img_3449_2

Img_3474_5


 また毎年、何枚か『時刊新聞』に投稿をしている。『時刊新聞』も自主企画のひとつで、リソグラフを持ち込み、参加者から記事を募りながら、イベント期間中新聞を出し続ける耐久レースのような企画なのだ。ディーラーズのブースやホテルで描いては持ち込んでいる。ああ、それからシール企画にも参加した。参加グッズにシール帳がついていて。みんなでシール交換をするのだ。今年は新しいシールを創った。


Img_3479

Img_3451


 これ以外も、ディーラーズに居ると、隣で加藤直之さんがライブペインティングをしてるし、通路の向こうでサイン会が始まってるし、近くでヒゲキタさんの3Dシアターもやってるし、ゲストさんが通りかかるし、物販も近いし、いろいろと飽きない。とはいえ、今年は比較的まったりとした参加だった。

Img_3475


P8270042


 来年の第57回日本SF大会は、7月21日〜22日に水上温泉ホテル聚楽で開催される。なので「ジュラコン」。すでにホームページもできている。水上温泉は、1988年に武田さんが実行委員長だったときに第27回大会Mig−CONが開催された。その時のホテルは松乃井だったらしい。私は……どうやらその時は不参加だったような気がする

2017年9月26日 (火)

第56回日本SF大会ドンブラコンLL(その2・企画参加)

 毎回SF大会はパラレルワールドのように10個以上のプログラムが並行して進行している。グランシップはこのように、SF大会に占拠されている。1階の大ホール・中ホールは一般開放エリア、2階以上のフロアーは参加者のみ入場できる。

Img_3470

「SF古代生物の部屋」毎回、おたくな学芸員さんたちが自分たちの情熱をほとばしらせて語っている。今年は、ドンブラコンで静岡なので、海ものということで、須磨海浜水族園のヒーロー・キャンシャリアンを生み出した絵の達者なもと学芸員(だいたいフィールドワークとか観察をするので、絵の上手な人が多い)さんをゲストに立ち見が出るほどの賑わいだった。来年はその名も「ジュラコン」で、チラシは永野のりこさんの描く発掘少年なので「これは受けてたたねば」と主宰者は燃えている。
「日本SF図書館員協会 第17回総会」SF大会に紛れ込んでいる図書館関係者の密やかな総会。主宰者が「今年はゆっくり温泉に浸かりたい」とパスした年もあるけれど、もうすでに17回。毎年ネタを振りながら活動報告というようなものを順番にしゃべって行くだけだが、SF者なので、みんな見方がやや斜め。中身はオフレコ企画なのでSNSではナイショ。
「白井弓子×西島大介対談〜私はあきらめない〜」「ディエンビエンフー」で惚れ込んだ西島さんはSF大会には常連なので、きっと参加するだろうとふんでいた。デビュー前から知っていた白井弓子さんはコミティアの常連ではあるけれど、SF大会は今まで参加されていなかったと思う。が、日本SF大賞をとったからには、きっとSF大会には参加してくれるだろうなあと信じていた。すると、日本のSF大会よりもワールドコンに先に参加してしていた。すごいよ〜 というわけで、私の好きなおふたりをそろって拝見できるプログラムが企画された。このふたりの共通点は、どちらも雑誌「IKKI」に連載していて、途中から単行本書き下ろしに移った(「地下に潜った」という表現を使っていた)ということ。その時の編集さんも交えて、その当時の裏話などもお聞きした。その後、サイン会もあって、白井さんに『イワとニキの新婚旅行』(会場で購入しようと控えていた)にサインをいただいた。西島さんの本は、つい『ディエンビエンフー TRUE END』まで全部買ってしまっていて、当日持ってくるのも忘れた〜(>_<)
 ほか、今年はオープニングに続いて「星雲賞授賞式」があった。星雲賞は事前に発表されていたが、今年は珍しく海外長編部門の作者のピーター・トライアスさんが来日して、直接受賞式に参加した。なんせ、『ユナイティッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の作者なので、喜んで来日してくれたのかなあと思ってしまった。
 閉会式では、暗黒星雲賞ほか各賞の受賞に沸き、キョーレツな個性の草野原々さんが星雲賞の日本短編部門につづいて、センス・オブ・ジェンダー賞、暗黒星雲賞のゲスト部門のトリプル受賞をした。「ジュラコン」告知の素晴らしい歌声は、池澤春菜さんが「才能の無駄遣い」と賞賛した。

2017年2月28日 (火)

第37回日本SF大賞受賞! 白井弓子さん『WOMBS(ウームズ)』

 ちょっと時系列は前後するが、2月25日に発表された白井弓子さんの『WOMBS(ウームズ)』の日本SF大賞受賞をお祝いしたい。白井さん、本当におめでとうございます!!
 1巻目が発行された2010年から、ずっとこのブログに感想を書いて応援してきた作品だったが、完結してこんなに華々しい場に出るとは、想像していなかった。(すみません)でも、うれしい!
(ちなみに、1巻 2巻 3巻 4巻 5巻(完結)の感想はこちら)
 候補作に並んでいたのは知っていたけど、マンガでの受賞は大友克洋の『童夢』と萩尾望都の『バルバラ異界』だけだし、作者のネームバリューも雑誌もちょっとマイナーだし、難しいかなあ〜とか思っていたのだった。でも、SFテイストはバッチリで、SFごゝろをうずうずさせてくれる作品には間違いない。
 そして、SFファンダムの方からプロ作家になって受賞する人はいても、マンガ同人誌界からプロになったマンガ家がSF大賞を受賞するのは初めてだろう。これ、きっとCOMITIAのネタになるね! そして、これを機会にSF大会に参加してディーラーズルームにも出展してくれたらうれしいなあ。
 それに、もうひとつ本当によかった、と思うことがある。『WOMBS(ウームズ)』の掲載雑誌「IKKI(イッキ)」は連載途中で休刊になり、3巻目の途中の話から、単行本描き下ろしになったのだ。雑誌は休刊になると別の雑誌に移籍するのもあるが、そのまま途切れてしまう連載も多くある。その中で、単行本描き下ろしで完結させた。継続は力なり! 作者が同人誌で締め切りのない創作をこなしていた経験が活かされたのか。また、発行し続けてくれた編集・出版もすごい。ありがとう、IKKI!

2017年1月15日 (日)

矢萩多聞さんと「となりのインドさん」

もう少し、昨年の残っているネタを。
 去る9月17日に、京都の恵文社一乗寺店で、インド好きにはたまらない「となりのインドさん」というイベントがあった。初めは出勤日だったので諦めていたのだが、シフト交替を頼まれたので喜んで交替した。けっこうギリギリの3日前だったが、申し込んだらまだ空きがあった。
 内容は、昼の部と夜の部に分かれていて、昼の部では、装丁家の矢萩多聞さんが1日カフェをオープンして、手ずから南インドの定食(ミールス)をふるまってくれる。矢萩多聞さんは10代からインドで暮らした半分インドな人で、今回のランチも南インドの西海岸に住むコンカニー族の人にならったものなんだそうだ。装丁家だけど、イラストも描くので、絵入りのカンタンな説明もつけてくれていた。素朴で味わい深い美味しいミールスとラッシーをいただいた。

Img_2659

 夜の部は、矢萩多聞さんとKAILAS(カイラス)の2人組との楽しいお話。KAILASは、松岡宏大(こうだい)さんと野瀬奈津子さんの編集&ライター&フォトグラファー2人組。最近『持ち帰りたいインド』という本を出版したので、その関係のスライドを中心に、後半は参加者の質問にも応えて、とても話題に富んだ2時間だった。矢萩多聞さんは以前同じ恵文社でタラブックスのお話を聞いたことがあるので、く喋る人と思っていたが、松岡宏大さんもそれに輪をかけたようによく喋る楽しい人だった。見た目より年をくっているようで、その年月で世界を旅して集めたアンティークやグッズで「一人民博ができる」と自分で言っていたから、いったいどんな家なのよ!? ガイドブックのarucoシリーズの『インド』(ダイヤモンド・ビッグ社)の編集にも関わっていたらしい。それ、持ってるよ! 確かに、家に帰って、奥付を見てみたら、小さくKAILAS、松岡宏大、野瀬奈津子の名前があった。確かに今回の新刊と同じニオイがするなあ。この本で紹介されているグッズはほとんど私物とか。
 矢萩多聞さんと松岡宏大さんは、多聞さんが10代に親に連れられインドへ行ってた頃から知っていたというから、繋がりは長い。宏大さんはマンガ家の流水りんこさんのtwitterにも名前が出てきて、りんこさんの漫画には、以前本を紹介したマサラワーラーの二人が登場してきたり、アルカカットさんのブログに多聞さんの本の評が書かれていて、直接の知り合いのようだし、インド界隈はけっこう世間が狭い気がする。

 今回の関連書籍
『持ち帰りたいインド』 KAILAS著(誠文堂新光社)
 今回はここに掲載されているもののウラ話とかも聞けた。よくあるかわいいだけの品物紹介ではなく、選んできた人の奥の深さが見える1冊。「この中でいちばん持ち帰りたいものは何ですか?」という質問が宏大さんからあったけど、私は赤いステッチの会計帳簿がいいなあ。お二人にサインをいただいた。

『偶然の装丁家』 矢萩多聞著 (晶文社)
『たもんのインドだもん』 矢萩多聞著 (ミシマ社)
 どっちにしようかと2冊持って行って(ミシマ社の本は、当日恵文社で買った)、多聞さんの半生が詳しく書かれている分厚い方の『偶然の装丁家』の方にサインをいただいた。ていねいなサインでテルグ語つき! 不登校、南インドに住む、装丁を始めたきっかけ、東日本大震災、京都への引っ越し等々、人生、どういう生き方をするかわからないなあ〜と思ってしまった。

Img_2660


2016年6月21日 (火)

写真集『Tannery』とトークイベント「写真集『Tannery』ができるまで」

 雨がしとしとふる月曜日、土日働いた分、月曜が休日なので雑用のあと、丸善ジュンクと誠光社を2軒回るつもりで河原町に出かけた。平日のうえ天気が悪くて、あちこちが空いていて楽々だ。誠光社も以前行ったときと違って、初めのうちは貸し切り状態だったので、カバンを床に置いて端から端まで順繰りに棚を見ていく。奥の小さなギャラリーまで行くと、「あれ? なんかインドらしい写真がある」と思って覗くと、「どうぞ、バングラデシュの皮なめし工場の写真展です」と声をかけてくれたのが、作者の写真家の吉田亮人(あきひと)さんだった。(パソコン打ってたからので、お店の人かと思っていた) はじめはタイトルの読み方(「タナリー」と読む)も、工場のあるハザリバーグという地名もわからなかったが、いろいろお話していただいて、つい、その皮なめし工場で作った皮のカバーがついている特装版を予約した。たまたま写真展は今日から始まっていて、ネット予約はあったけど、書店では初めてということで、有り難くも書店予約第1号の栄誉にあずかった。

 その時にいただいたDMに、5月30日(月)にトークイベント「写真集『Tannery』ができるまで」が開催されることが載っていた。誠光社にて、吉田亮人さんと、今回の写真集の装丁をした矢萩多聞さんとのトークイベントだ。多聞さんは以前Tarabooksのお話を一乗寺恵文社で聞いたことがある。これはまた、ラッキーなことに月曜日なので、後日電話で申し込んだ。当日は18時でいったん閉店して、18時30分から受付、イベントは19時開始という。あの狭い店内のどこでやるのかな?と思ったら、真ん中の両面書架にキャスターがついていて端に移動され、イスが並んで20人ばかりの会場ができていた。数日前に予約確保の電話もいただいていたので、開始前に購入。吉田さんと矢萩さんの息の合った掛け合い漫才……もといトークで、吉田さんは小学校の先生をしていて、奥さんに「写真をしたら?」といわれるまで、写真をやったことなかったこと、パリの展覧会に出展したときのドタバタ?や皮なめし工場にどうやってアプローチしたかなど、次々と話がわいてでてきて2時間があっという間だった。終了後「Tannery」にサインもいただいた。
 
 その写真集『Tannery』だが、これは自費出版になる。レザーケース付きの特装版は100部、「コルドバ」という皮のような特殊紙を揉んで伸ばして折って手作りしたカバー付きの普及版400部。ページは180度に開くコデックス装で、表紙がない。多聞さんが「ケースから内蔵が出てくるかんじで」という表現を使っていたのがうなずける。まさに、この写真集の皮は本当にぬめっとした生臭い皮だ。それが、特装版に整えられた赤いケースの皮と本当に同一なのかと疑いたくなる。職人はほとんど装備なく皮をなめす劇薬を使う。蒸し暑く、ものすごい臭いが充満しているらしい。なかなかすさまじい情景だ。思えば、原始に動物の皮は、織物よりも先に人類が身にまとった衣服だ。昨日の記事に書いた『エイラ−地上の旅人』には何度も、狩りをして、動物を解体して、皮をはいで、なめして……という作業が描写されている。その頃は硫酸やクロムといった薬品はなかったはず。たしか、皮を白くするのに、おしっこをためて……という説明があったなあ。クロマニヨン人もやっていた皮なめしが、どうしてこうも薬品漬けになったのか。文化の数奇な歩みを考えさせられる。

 吉田亮人さんのホームページはこちら 

2016年6月20日 (月)

小説『エイラ−地上の旅人』全6部全16巻

 ジーン・アウル著、ホーム社発行『エイラ 地上の旅人』全6部全16巻を約3年かけて読んだ。5歳(推定)の頃、地震によって家族・一族を失ったクロマニヨン人の子どもエイラが、ネアンデルタール人の氏族にひろわれ、そこで成長し、その後そこを出て、同族(異人)と出会い、在るべき場所にたどり着くまでの壮大な旅の物語だ。
 発行は読み始めるまでよりずっと以前なのだが、完結してからにしようと思っていたので、最終巻が出たことを確認して読み始めた。実はそれ以前に、この小説は児童文学として評論社から第4部まで発行され、未完に終わっている。そっちの方も読んだ。併せて発行順に並べてみると、以下のようになる。

シリーズ「始原への旅立ち」(評論社版)
『大地の子エイラ』(上・中・下巻)1983年刊
『恋をするエイラ』(上・中・下巻)1985年刊
『狩りをするエイラ』(上・中・下巻)1987年刊
『大陸をかけるエイラ』(上・中・下巻)1993年刊

シリーズ「エイラ−地上の旅人」(ホーム社版)
『ケーブ・ベアの一族』(上・下巻)2004年刊
『野生馬の谷』(上・下巻)2004年刊
『マンモスハンター』(上・中・下巻)2005年刊
『平原への旅』(上・中・下巻)2005年刊
『故郷の岩屋』(上・中・下巻)2005年刊
『聖なる洞窟の地』(上・中・下巻)2013年刊

 いちばん最初に評論社版の第1部を読んだ。それがめっちゃ面白くて、数々のふりかかる危機にエイラが立ち向かい、乗り越えていく様子がハラハラドキドキの連続で、分厚い全3巻を一気に読み切った。終巻まで読んだ今でも、第1部がいちばん面白かったなあと思う。しかし、エイラが成長して行くにつれて、どうしてもセックスが官能的に絡んでくるし、大人同志のかけひきが多くなってくるし、人がいろいろ死んだり、ちょっと残酷なシーンもある。児童文学としてはしんどいかなあ……と思っていたら、評論社版が出なくなった。あとで、ホーム社版をみたら、著者は大人向きに書いた小説であり、全訳版が出たことがうれしいといったようなメッセージが書いてあった。評論社版は抄訳だったのか。(といっても、ボリュームをみると、削られたのはわずかだろうと思う)だいぶ前に読んで、読み返していないけど、第1部なら最後の方に、カニバリズムを思わせる箇所があったので、そこらへんかなあ。ただ、それだけではなくて、原書の発行ペースも後半落ちている。第1部から第4部までは、1980〜1990年でコンスタントに発行されているが、第5部が2002年、第6部が2011年と、ずいぶん間があいている。そして、第5部が出て以降、ホーム社が版権を買い取って、訳も新たに第1部から発行しなおしたようだ。
 読み切るのに3年もかかったのは、そればかり読んでいたわけではなく、並行してや巻の合間に別の本を読んでいたりしたからだ。なんせ、分厚いハードカバーなので、通勤に持ち歩くのをときどきやめたくなる。また、ストーリーの中に、大自然の描写や薬草や狩りや暮らしの様子が詳しく調べられて語られる。もし現代社会が崩壊して原始にもどっても、エイラたちの知恵があれば生き残れるかもと、思わせられるほど詳しい。詳しいが、ちょっとかったるくなる。休憩したい。
 でも、読み切れたのは、やっぱり面白かったからだ。人の思考や簇(むら)の慣習は現代とは異なり、なじまないかもしれない。でも、何もないところから知識を獲得し、新しいことを始めていく行程は、読んでいてぞくぞくする。生きることは進化であり、こうして人類は今まで歩んできたんだと時空を超える思いを抱いてしまう長い旅だった。

2016年4月24日 (日)

小説『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』

『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』山本 弘著(東京創元社)
 美心(びしん)国際学園(BIS)のビブリオバトル部に入ってしまった高等部10年(高校1年にあたる)の伏木空ちゃん(SF大好き女の子)を中心に展開される物語の3冊目。1冊めの『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』山本 弘著(東京創元社)は、感想記事を書いたけれど、2冊目の『幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部』は、忙しさに押されて書き損ねてしまったが、まだまだ山本弘さんのおたくな引き出しはいっぱいあるようだ。今回の本には空がコミケに初参加する番外編の「空の夏休み」とライバルの真鶴(まなづる)高校ミステリ研究会とのビブリオバトルの話が中心の「世界が終わる前に」の2編を収録。「空の夏休み」は、同じビブリオバトル部の小金井ミーナが家族3人で行くはずが行けなくなったので、代わりに初参加することになる。いきなりサークル参加して、コスプレして、オフ会にも参加するという濃さ。ミーナの家族ぐるみの大きなお友達のおじさんたちは特撮ファンでこれまた濃い。でも、年代を超えた仲の良さだ。う〜ん、実感がこもっているなあ。「世界が終わる前に」のネタのミステリ系は私も詳しくないのだが、興味を誘うように幅広くチョイスして、キャラのたった会話で展開をしている。今回目立ったのは真鶴のミステリ研会長の早乙女寿美歌とBISの〈科学の魔女〉菊地明日香。埋火くんはちょっと出番が少なかったね。
 このシリーズは創元のウェブマガジンに掲載されているようだが、今回も巻末で惹きの展開があったのでまだしばらくシリーズで続きそうだ。

2016年2月 7日 (日)

絵本『世界のはじまり』

『世界のはじまり』バッシュ・シャーム/ギーター・ヴォルフ著、青木恵都訳(タムラ堂)
 これは、先月行った誠光社で見つけたインドの絵本。といっても、出版は日本のタムラ堂で、同じ由来の絵本、『夜の木』を以前出している。
チェンナイのtara booksの工房でつくった手漉き紙、手刷りのシルクスクリーンの絵本で、1冊1冊ナンバリングがされている。私の買った分は3000部のNo.448だった。『夜の木』の時は、3刷目で1000部だったが、タムラ堂、今度は初版で一気に3000部発注したのか。それでも、店頭には1冊しか並んでいなかった。インドのゴンド族に伝わる命のはじまり、大地のはじまり、芸術の誕生などが語られる。色も線もはっきりしたゴンド・アートは1枚1枚をじっくりと堪能できる。紙の手触り感も最高。ただし、3600円(本体価格)はけっこうお高いし、感覚的には大人絵本かな。
 タムラ堂のホームページからリンクされている『世界のはじまり』のメイキング映像をみると、ひとつひとつの絵が深い意味を持っていることがあらためてわかる。また、tara booksの本作りの行程は、「本を作ってくれてありがとう」と職人さんたちに感謝の言葉をいいたくなる。


Img_2149


2016年1月25日 (月)

小説『11』(イレブン)

『11』(イレブン) 津原泰水著(河出書房新社)
 昨年読んだのに書きそびれてしまった。この津原泰水の短編集には、近藤ようこのマンガ『五色の舟』の原作が入っているので、読んでみたかったのだ。台詞まわしもほぼ同じだが、確かにヒロシマが具体に出てきていないので、もっと寓話的なぼんやりした舞台だ。絵って偉大だ。それでも、十分面白い。この短編集のなかではやっぱり一番好きだ。
 短編集の他の作品にも通じて、斐坂(いさか)という人物が何回かでてくる。『五色の舟』でのくだんを撃つ兵隊さん、『微笑面・改』という作品では彫刻家、『YYとその身幹』では不倫する男……作者にとってキーマンなのかもしれない。

より以前の記事一覧