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2014年6月10日 (火)

小説『深紅の碑文』

『深紅の碑文』(上・下)上田早夕里著 (早川書房)
 リ・クリティシャスと呼ばれる大規模な海面上昇があって、大陸の大部分が海の底に沈んだ未来。陸上民と海上民に分かれて生き延びた人類は、近い将来プルームの冬とよばれる〈大異変〉を予測し、生存のための模索を続けている。光文社文庫の短編『魚船・獣船』、早川Jコレクションの『華竜の宮』に続く世界にある。『華竜の宮』は図書館の本で読んでとても良かったので、文庫になったとき自分で買い直したほどの作品なのに、自分の過去のblogを振り返ると感想を書いていないじゃないか。繁忙期で書き損なったのか。
 「世界は残酷なのだから」と言ったのは、最近では『進撃の巨人』のミカサだが、この物語の中でもまさに世界は残酷だ。金と資材がないと人は救えないのだ。あっても、救える人は限られる。努力や愛情や根性や思いやりで世界が平和にはならない。その中で登場人物たちはそれぞれの信念をもってあがく。救援団体〈パンディオン〉の理事長・青澄も、海上民の反社会的集団ラブカのリーダー・ザフィールも、無人宇宙船をとばすことを夢見る星川ユイも。覚えきれないくらいその他たくさんの人が登場し、つながりながら、それぞれの想いで生きている。そして死んでいく。
 その人間群像もおもしろいけれど、正統なSFなので、その舞台設定もゾクゾクする。リ・クリティシャス以降の世界は、ヒトも含めあらゆる生物が遺伝子工学によって変異している。宇宙を目指していた超科学は失われ、海上民は必ず双子を産んでそのかたわれの魚舟を海に放つ。陸上民のエリートは人間の副脳に直結して主を支援するアシスタント知性体を持ち、害のあるものを駆逐する殺戮知性体は人同士の争いをより血みどろに展開させる。
 世界は残酷かもしれないが、このSFはとてもおもしろい。

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